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 このページでは、嗜癖行動学に関連する言葉の説明をしています。

 |共依存アダルト・チルドレン嗜癖

 共依存
 1980年代のアメリカのアルコール依存症の治療の中で生まれた言葉です。アルコール依存症という病気に罹っている人のそばで、一生懸命にその人のお世話をしている人(妻や家族)の存在に、治療者は気が付きました。その人達は、アルコール依存症という病気の治療に必要な世話をするのではなく、本来、アルコール依存症の本人がすべき断酒の事や、酔って人を怪我させてしまったことの謝罪、酔って警察沙汰になったことの後始末など、まるで自分の事のように一生懸命世話をしていました。
 つまり、本人の代わりに、謝罪をしたり、アルコールの飲酒を控えさせたりしていた人たちです。その世話焼き行為の結果、アルコール依存症の本人は、いつまでたっても、自分自身の人生(生活)の始末を自分ですることがありません。つまり、アルコール依存症という病気そのものの治療を妨げるような人たちを当時は、コ・アルコーリックス(Co-alcoholics)と呼んでいました。
 やがて、そういった人たち自身が、人の世話を焼いていなければ、自尊心を保つことが難しいという問題を抱えた人たちであるという認識が広まり、コ・ディペンデンシー(Co-dependency)と呼ばれるようになりました。
 このコ・ディペンデンシーは、80年代末頃になって、精神科医の斎藤学(さいとう・さとる)氏によって、共依存という邦訳が付けられ、日本でも認識されるようになった概念です。
 恋愛依存の研究をしているピア・メロディー(Pia Mellody)は、以下の表に示すように、共依存について、5つの特徴があると説明しています。


 表 ピア・メロディによる共依存の5つの特徴
1 自己愛の障害 適切な高さの自己評価を体験できない
2 自己保護の障害 自己と他者との境界設定ができずに、他者に侵入したり他者の侵入を許したりする
3 自己同一性の障害 自己に関する現実を適切に認識することが困難
4 自己ケアの障害 自己の欲求を適切に他者に伝えられない
5 自己表現の障害 自己の現実に沿って振る舞えない
 出典:Pia Mellody "Facing Love Addiction"

 「自己愛の障害」とは、言うなれば自尊心のとても低い人のことです。自分で自分のことを褒めてあげることがなかなかできなくて、いつも誰かから評価されていないと安心出来ない人という意味です。「気の利く女性」「いいお母さん」「いい妻」のように、他者から評価されることでしか自分の自尊心を保てない人のことを意味します。
 「自己保護の障害」とは、自分と他者との区別が曖昧な人のことです。本来は子どもがすべきことなのに、子どもの学校の宿題をやってあげたり、あるいは子どもが好きでもないのに、一生懸命ピアのを教え込む母もこの自己保護の問題を抱えていると言えるかもしれません。また、夫や子どもからの暴力についても、甘んじて受けるような女性もこの自己保護の問題を抱えていると言えるでしょう。
 「自己同一性の障害」とは、夫が自己中心的なアルコール依存症者なのに、その事を否認して、”あの人は、今は調子が悪いだけ。そのうち、よくなってくれる”というような間違った現状認識をする人のことです。現状をそのまま受け入れることは、共依存の人にとって、自分の世話焼き行為をやめるということに他なりません。その事は、結局、自分のこれまでの生き方を放棄することになります。これは、共依存の人にとって非常に辛い選択になります。辛い選択をしないために、現実を受け入れようとしないというのも共依存のひとの問題です。
 「自己ケアの障害」とは、自分の欲求をいつも後回しにする人のことです。もともと、共依存の人は自分の欲求を声に出してしまうほど、自尊心が高くありません。自分の欲求や本音を言ってしまったら、嫌われてしまうのではないかと怯えている人たちです。
 「自己表現の障害」とは、自分の年令や立場に見合った自己表現ができないということを意味します。実際には、40歳なのに、自分の身なりにお金をかけたり、化粧をすることをあまりしないで、まるで50歳に見えるような状況のことが含まれます。


以下のリンクから、共依存症スクーリーニングテスをを受けることができます。あまり悩まずに、あてはまるものを選んで回答してみてください。自分が共依存にあてはまるか否かを知ることができます。

共依存症スクリーニングテスト

 アダルト・チルドレン
 アルコール依存症の親がいる家庭や、家族にギャンブルなどの依存症問題を抱えた人がいる家庭、あるいは虐待問題を抱えた家庭で生まれ育った人を意味する言葉です。つまり、機能不全家族の家庭で生まれ育ち現在大人になった人というのがこのアダルト・チルドレン(AC)の言葉の意味です。
 もともとは、親がアルコール依存症で、そのような家庭に生まれ育った人という意味で使われていました。この言葉は、アメリカのアルコール依存症の臨床現場から生まれでた言葉です。アルコール依存症の治療を受けている人の子どもたちに、精神的な問題を抱えた子どもがおり、彼らが大人になると、その親と同じように、アルコールの問題を抱えている人が多くいることに臨床家たちが気づいたのです。このような人たちをアダルト・チルドレン・オブ・アルコーリックス(Adult Children of Alcoholics)と呼びます。
 90年代に入ってから、このアダルト・チルドレン・オブ・アルコーリックスという言葉がわが国に紹介され、アルコール依存症の問題に限らず、親がギャンブルの問題を抱えている、親が薬物の問題を抱えている、親が虐待問題を抱えている、などいわゆる機能不全家族の家に生まれ育って現在大人になった人という意味に拡大解釈されるようになりました。
 その一方で、一部のマスコミは、「大人になりきれない子ども」、「現在の自分の苦しさを生育歴のせいにするダメな子どもたち」というような間違った日本語訳を当てはめて紹介することがあり、何かと誤解の多い言葉であったことも事実です。

 表は、ジャネット・ウィテッツ氏によるこのアダルト・チルドレン13の特徴を示したものです。
 
 
 表 アダルト・チルドレンの13の特徴
ACは何が正常かを推測する(「これでいい」との確信が持てない) 
ACは物事を最初から最後までやり遂げることが困難である 
ACは本当のことを言った方が楽なときでも嘘をつく 
ACは情け容赦なく自分に批判を下す 
ACは楽しむことがなかなかできない 
ACはまじめすぎる 
ACは親密な関係を持つことが難しい 
ACは自分にコントロールできないと思われる変化に過剰に反応する 
ACは他人からの肯定や受け入れを常に求める 
ACは他人は自分と違うといつも考えている 
ACは常に責任をとりすぎるか、責任をとらなすぎるかである 
ACは過剰に忠実である。無価値なものとわかっていてもこだわり続ける
ACは衝動的である。他の行動が可能であると考えずにひとつのことに自らを閉じこめる 
 出典:Dr. Janet G. Woititz

 たとえば、幼少の時、父がアルコール依存症だった家庭に育った人は、小さい頃から、父親が飲んで暴れないように、あるいは母親が殴られないように、その子は、子どもながらにも、家族の人間関係を調整する役を追って育ちます。その結果、自分の欲求を後回しにし、いつも大人の表情を伺うようになります。
 大人になってからも、この性質はなかなか変わることがありません。その結果、いつも周囲からは大人びているように見られたり、いつも心から楽しんでいないように見られたりします。実際、彼らの多くが、自分の欲求を他者に伝えることができずに、いわゆる「いい子」のまま成人を迎えます。彼らの多くが、このように自己の内面に心理的な問題を抱え、対人関係の中でも、他者との親密性を築くことが難しく中には、抑うつ感をずっと抱えた人もいます。
 
 このような人たちの心理的な苦しさの原因に生育歴という問題があるという指摘をしてくれた言葉がこのアダルト・チルドレンという言葉なのです。この言葉がなかった頃は、多くの当事者たちが漠然とした生きづらさを抱えて生活していましたが、その原因がわかったことで、自分の抱えている生育歴の問題に立ち向かおうとする勇気を当事者たちに与えた言葉でもあります。

 不登校やひきこもりという課題に向き合っている子どもたちの中にも、父親がドメスティック・バイオレンス(DV)の問題を抱えていたり、母親が不在がちだったりという子どもたちがいます。このような子どもたちも、このアダルト・チルドレンという課題を抱えた子どもたちであるということが言えます。どうしようもない不安や怒りをコントロールできずに、学校に行かないという行為で、何とか自分を守ろうとしている子どもたちです。

出典   
  クラウディア・ブラック著 『私は親のようにならない』、誠信書房
   Wクリッツバーグ著 『アダルトチルドレン・シンドローム』、金剛出版 など

 

 嗜癖 
  嗜癖(しへき)と読みます。英語では、addiction(アディクション)と言います。
 一般的には、依存症と呼ばれる事柄を意味している日本語ですが、あまり”嗜癖”という言葉は用いられません。日本では依存という言葉が代わりに使われたり、英語のアディクションという言葉がそのまま使われたりしています。
 
 嗜癖は、嗜癖する対象によって、大きく3つに分けて考えることができます。
 最初に、アルコールや、ニコチン、カフェイン、睡眠薬、抗不安薬などのように、物質の摂取に関して、摂取を止められなくなったり、コントロールできなくなったりする嗜癖を物質嗜癖と呼びます。(たとえ、医師から処方される処方薬だとしても、多量に睡眠薬を所持していたり、処方量以上にそれらの薬を摂取することも、処方薬依存であり物質嗜癖です。)
 第二に、物質嗜癖に対して、買い物やギャンブルなど、物質を体内に摂取することではなく、行為そのものに対して嗜癖することを、過程嗜癖と呼びます。
 第三に、物質嗜癖や過程嗜癖のほかに、対人関係における依存があります。他の人を世話することが、自分の存在価値を表現するような人間関係、あるいは、恋愛対象がいつも一定せず変わってしまうような関係を関係嗜癖と呼びます。この関係嗜癖については、第二の過程嗜癖と同じ嗜癖と捉えて、嗜癖全体をふたつに分け説明しているテキストもあります。
 分け方については、あまり深い意味がありませんが、昔は薬物やアルコールのみが依存の対象となると考えられていましたが、最近では、行動や対人関係も依存の対象となると考えられるようになったことが重要なことです。

 以下の表は、上述の嗜癖の分類を意味しています。
 
 
 
 表 嗜癖の分類
1 物質嗜癖(substance addiction) 体内に取り入れる物質の摂取に対してコントロールできなくなること。
アルコール、アンフェタミン(覚せい剤)、カフェイン、大麻、コカイン、ニコチン、アヘン、処方薬への依存を指す。
2 過程嗜癖(process addiction) 行為や行動に対してコントロールができなくなること。
ギャンブル、買い物、リストカット、摂食、仕事、テレビゲーム、インターネット、携帯、への依存を指す。
3 関係嗜癖(relationship addiction) 対人関係における他者依存を意味する。
共依存が含まれる。他者に尽くすることが自分の生きがいになっている関係や、恋愛関係において、パートナーがいつも一定せず変わってしまうような人間関係。

 
Last Update Thursday, 03-Nov-2011 12:16:23 JST
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