アルコール関連問題とは


●規制緩和とアルコール販売

 規制緩和の流れの中で、私たちの生活が大きく変わろうとしています。これまで規制があったことで、競争原理が阻害され、消費者にとって不利な状況が多々ありました。消費者の利益を守るための規制緩和は大いに推進されるべきです。しかし、規制を全てなくしてしまうことが、必ずしも消費者の利益を守るとは言えません。特に、私たちの健康と安全を脅かすような規制緩和は、厳に慎むべきです。
 酒類販売の免許制が規制緩和の中で、変革を余儀なくされようとしています。24時間営業のコンビニエンスストアや大規模なスーパーマーケットで、簡単にアルコール類が購入できるようになることが、私たちの生活の利益になるのでしょうか。アルコールによる社会的問題は数知れません。飲酒運転による交通事故や飲酒による犯罪、アルコールによる病気、特に未成年の飲酒は放任されてはなりません。青少年の健全育成のためには、酒類の対面確認販売を徹底する。また、現在設置されている酒類の自動販売機を撤去もしくは、IDによる認証機能の付いた自動販売機に改良し、未成年にはアルコールを絶対売らない環境を整備することが必要です。
 酒販業界は、平成12年5月を目標にアルコール類の自動販売機撤廃に向けて活動をしていますが、消費者はこの目標が達成されるよう、酒販業界を厳しい目で見つめる必要があります。


1.アルコール関連問題とは
 アルコールによる問題は、何も病気(肝硬変やアルコール依存症)だけに限りません。飲酒による犯罪、非行、交通事故、家庭問題などこれらは全てアルコールによって引き起こされる問題です。
 世界保健機関(WHO)は、「アルコール関連問題」を次のように定義しています。
我が国では、前田信雄が1976年に日本におけるアルコールによる社会的損失額を計算し、注目を集めました(『ホントに知っていますか酒の害たばこの毒』,日本書籍,1979.9)。当時の損失額は2,600億円にのぼり、1年間だけで日本人1人が酒の害いわゆるアルコール関連問題のために、2,600円あまり支出した計算になります。


図1-1 日本における酒による年間損失額(1976年) 出典:前田(1978年8月15日朝日新聞)


表1-1 アルコール関連問題

@健康問題(潰瘍、胃腸障害、胎児障害、肝硬変、脳障害、がん、心臓疾患)
A事故(飲酒運転による事故、レクリエーションによる事故)
B家族問題(児童虐待、配偶者虐待、離婚、夫婦間暴力)
C職業問題(産業事故、短期および長期の欠勤)
D犯罪(他殺、強盗、暴行、暴力)

出典:WHO(1979年第32回総会)

2.アルコール関連問題による経済的損失
 アルコールによる社会的・経済的損失は、年間に6兆6000億円以上(1991年厚生省)とも言われています。国税庁によると酒税収入は、年間およそ1兆9千億円で損失のほうが圧倒的に多いことがわかります。(アルコールによる経済的損失は、アルコールによる疾患によってかかる医療費や飲酒運転による交通事故による損失。飲酒による犯罪や放火による損失などが含まれます。)
 


図2-1 アルコールによる経済損失と酒税収入

表2-1 酒税の税額、販売(消費)数量

区分

税額

販売(消費)数量

伸び率

伸び率


平成4年度




億円
18,778
18,646
19,833
19,454
19,561
18,963

△ 0.2
△ 0.7
6.4
△ 1.9
0.6
△ 3.1
kl
9,426,778
9,380,119
9,643,503
9,603,358
9,657,349
9,410,191

1.6
△ 0.5
2.8
△ 0.4
0.6
△ 2.6
                               出典:国税庁


3.未成年の飲酒問題
 未成年の飲酒は、近年増加傾向にあります。自動販売機で簡単にお酒が買えたり、コンビニエンスストアなどで、簡単にお酒が購入できる現状は一刻も早く改善しなければなりません。
 未成年の飲酒は、「未成年者飲酒禁止法」によって禁じられています。この法律は、大正11年に教育問題にも真剣に取り組んだ根本正衆議院議員によって作られました。

未成年者飲酒禁止法(大正11年3月30日)
(未成年者に対する飲酒の禁止)
第1条  満20年ニ至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス
2.未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者若ハ親権者ニ代リテ之ヲ監督スル者未成年者ノ飲酒ヲ知リタルトキハ之ヲ制止スヘシ
3.営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満20年ニ至ラサル者ノ飲用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス

第2条  満20年ニ至ラサル者カ其ノ飲用ニ供スル目的ヲ以テ所有又ハ所持スル酒類及其ノ器具ハ行政ノ処分ヲ以テ之ヲ没収シ又ハ廃棄其ノ他ノ必要ナル処置ヲ為サシムルコトヲ得


第3条  第1条第2項、第3項ノ規定ニ違反シタル者ハ科料ニ処ス

第4条  営業者カ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス 但シ其ノ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス2.営業者ハ其ノ代理人、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス3.明治33年法律第52号(法人ニ於テ租税及葉煙草専売ニ関シ事犯アリタル場合ニ関スル法律)ハ本法ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス


●未成年の飲酒問題は深刻です。図3-1は東京の小学生を対象に行ったアンケートで、
飲酒経験を聞いています。図中の「その他」は月1回以上飲酒すると答えた小学生で、
50%近い小学生が、月1回もしくはそれ以上飲酒している
ことがわかります。


図3-1 「小学生の飲酒経験」 出典:東京調布市北ノ台小学校




●中学生の飲酒問題となると、更に深刻です。図3-2は中学生の飲酒頻度を
表していますが、10%を超える中学生男子が週に1回以上飲酒しています
図3-2 中学生の飲酒頻度 出典:東京都市ヶ谷商高 原田教諭




4.自動販売機と広告の問題
 私たちの街には、自動販売機が溢れています。お酒を簡単に自動販売機で買える国は、他にないでしょう。消費者にとって便利な自動販売機でも、これを未成年が利用し、お酒を手に入れ易い環境となっていることには、大きな問題があります
 また、アルコールのテレビCMも人気アイドルを起用し、若年者の飲酒者拡大を目指すような広告は、厳に慎むべきでしょう

平成12年 酒類の自動販売機撤廃を目指して

平成3年 WHOアルコール関連問題国際専門家会議(東京)
      自動販売機での酒類販売禁止の検討を勧告

平成6年 中央酒類審議会
      自動販売機撤廃を検討するよう報告

平成7年 全国小売酒販組合中央会総会
      平成12年5月までに酒類の自動販売機を全廃することを決議

平成7年 国税庁
      自動販売機撤廃を指導するよう各国税局に通達





5.飲酒運転と死亡事故
 
飲酒
しての自動車運転が危険であることは、言うまでもありません。しかし、飲酒運転によって検挙される人の数は、一向に減る気配がありません。警察庁の発表によると「酒気帯び運転」の取り締まり件数は、年間およそ33万件。「酒酔い運転」の取り締まり件数は、年間およそ4千件です。
 飲酒運転が怖いのは、事故になると、死亡事故などの深刻な事態を招いてしまうからです。


図5-1 酒酔い運転による死亡事故件数 出典:警察庁


16th Dec. 1999 Up